研究概要 |
降下堆積する火山灰の粒子は,噴出源から遠方に離れるにつれ細粒となると共に,火山灰層としての厚さも薄くなり,ついには火山灰粒子が層をなさず,土壌,氷,その他の堆積物中に拡散した状態となる.これら拡散した極微粒子が識別できれば,様々な堆積物の火山灰に基づく年代決定の機会は飛躍的に増大する.本研究では当面技術的に可能な100〜5μmの粒子を対象とし,火山灰粒子形態,サイズ,元素組成等を,ICP-MS,SEM/EDS,SEM等により測定し,一粒一粒の粒子の化学組成を主とする特性を把握し,微少テフラ認定の可能性を探った. 微小,微少量火山灰が特に問題となるケースとして,本研究では南極の表層雪,氷床コア,日本の関東ローム層,泥炭層,土壌層を対象とし,給源とされる噴火の噴出物と直接化学組成等を比較検討した. 南極の表層雪試料中の無色固体微粒子(20〜5μm)については,形態と化学組成に基づき,フィリピンのピナツボ火山1991年噴火の火山ガラスが南極まで到達したものであることが判明した.また,南極のH15氷床コアについて,無色固体微粒子(20〜5μm)が集中する1815年の層は,形態や化学組成からインドネシアのTambora火山1815年噴火からもたらされた火山ガラスが多く含まれていることが判明した.従来,氷床コアの年代決定には化学的シグナルが使われてきたが,既知の噴火年代と年代を合わせるだけであり,本研究のように個性のある火山噴出物による方法は遥かに優れている. 有珠山2000年噴火については細粒火山灰の生成,拡散過程について検討した.このほか,本研究では熱ルミネッセンス法に基づいて,火山灰中の石英粒子,一粒一粒毎の年代を測定する手法の検討を神津島の火砕物を用いて行い,良い結果を得た.
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