研究概要 |
今回,九州東部大野川層群中の花崗岩礫と,その北側の朝地帯に分布する山中花崗閃緑岩,および九州西部肥後帯ペルム系水越層中のトーナル岩礫のK-Ar年代測定ならびに全岩化学分析,さらに肥後変成岩から抽出したモナザイトとジルコンのCHIME年代測定を実施した.その結果は下記の通り. 1.大野川層群中の花崗岩礫4試料中の角閃石と黒雲母のK-Ar年代は103-108Maに集中した.また,山中花崗閃緑岩の角閃石,黒雲母,カリ長石のK-Ar年代は各々103,104,75.1Maであった.したがって,大野川層群中の花崗岩礫の供給源として,朝地変成岩周辺の花崗岩類に対比することは可能であるが,朝地地域の花崗岩類が領家帯に属するか否かは残された課題である. 2.水越層中のトーナル岩礫の角閃石K-Ar年代は260±13Maであった.この年代値に基づき,Sr同位体比初生値を計算すると,1試料を除き0.7037〜0.7053となった.比較的新鮮な2試について全岩化学組成分析を実施した結果,本岩はK2Oに乏しいMタイプに近似した性格を有し,Nb-Y,Rb-(Y+Nb)図において火山弧型花崗岩の特徴を有することが明らかになった.この結果は,いずれも南部北上帯〜黒瀬川帯のペルム系中の薄衣型花崗岩礫と共通する特徴であり,かつ古領家帯を構成するペルム紀花崗岩類とも共通している.以上から,水越層の礫を供給したペルム紀の後背地には,1000kmオーダーの細長く未成熟な島弧(古領家古陸)があり,Mタイプに近い花崗岩が地表に露出していたことが判明した. 3.肥後片麻岩のCHIMEモナザイト年代は約120Maである.一方,肥後片麻岩の変形のピークとして約250Maであるという説があるが,今回ジルコンのCHIME年代を検討した結果,250Ma前後の年代が主体をなすことがわかった.ただし,その年代は砕屑性ジルコンが保存していたInherited ageであり,変成作用の時期を示してはいないことが明らかされた.
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