研究概要 |
本研究では,島弧の地質環境における若い火山活動に伴う浅熱水性金銀鉱床の成因と生成過程の解明に主眼を置き,フィールドワークと採取試料に於ける各種室内実験の実施結果から,金鉱床の形成場と元素濃集プロセスを鉱床学的,地球化学的,岩石学的観点から検討した.また,化学分析に於ける実験手法の改良と精度向上を目指して,基礎的な実験も併せて実施した. 主な研究対象として,西南北海道および中部北海道の浅〜中熱水性環境に於ける低硫化型金鉱化作用及び高硫化型多金属性金鉱化作用に着目し,そこでの変質鉱物及び鉱石鉱物の組合せとその化学組成を基に,各金鉱床の物理化学的生成条件及び両鉱床タイプの時空的関係について検討した.また,研究対象をさらに東北日本およびインドネシアの同タイプの鉱床にも拡大し,比較検討を行った. 本研究によって得られた成果を総合すると,高硫化型金鉱床の形成は関係火成岩と密接な因果関係を有し,マグマ起源の熱水の強い関与を受けていることが判った.一方,低硫化型金鉱床は天水起源の熱水が主体であることが明らかになった.前者では,後者に先行してその熱水活動が開始され,空間的には貫入岩体に対してより近傍に配置されるという時空的関係を有する.また,両タイプの金鉱床の形成にはマグマ活動が密接に関連し,そこから発生した高温熱水中に各種金属元素が硫化物錯体として地下浅所へ輸送され,減圧沸騰,或は天水との混合による冷却・希釈・酸化などの要因が,それぞれの金鉱床の元素固定に有効に働いた事が強く示唆された.
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