研究概要 |
角閃石を使い圧力を推定できるようにする事を本研究の目的として、合成実験をおこなった。実験は熱水合成装置を用い、温度600℃〜930℃、圧力0.05GPa〜0.34GPa、酸素分圧FMQのもとでおこなった。南極やまと山脈の閃長岩を使った実験では角閃石がマグマから晶出している事により固相線より温度が高く、角閃石の安定領域内であったことから固相線と角閃石脱水反応曲線との交点を求め、その交点を迸入時の最大圧力とした。その結果、迸入深度が0.3GPa(約10Km)を越えていないことがわかった(Oba and Shiraishi1993,1994,1995)。また東南極セル・ロンダーネ山脈西部の酸性片麻岩中の角閃石や黒雲母の安定領域からもこれらの変成岩に熱の影響を与えた花崗岩岩脈の迸入の深さを求めることができた。 花崗岩に産する角閃石のAlが圧力の増加にともない増加し、地質圧力計として経験的に使えるという報告がある(Hammarstrom and Zen 1986,1992,Blundy and Holland 1990,1992,Rutherford and Jonson1992)が、今回の実験では天然の岩石を出発物質として使った場合、固相線付近ではほとんど鉱物の化学組成は動かなかった。角閃石組成変化において圧力の増加にともなう組成変化より温度にともなう組成変化の方が大きい。これはpargasite成分増加が温度増加に伴うことによる。pargasite成分増加はAlの増加を伴うため温度増加に角閃石の組成変化がわずかに見られたが、この方向が圧力増加によるのか確かめ必要がある。このため角閃石の元素分配から圧力依存性についてまだ検討中である。
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