研究概要 |
外洋への陸起源浮遊塵(及び鉄)フラックスを評価するために環境プルトニウム(Pu)-239,240をトレーサーとする方法を考案したので,その方法の基礎データを得るために,長期間に亘って粒径別に採取した大気浮遊塵について,Pu-239,240濃度と鉄などの生体必須金属元素濃度の定量を中心とする実験的研究を平成9年度から11年度にわたって実施した。研究成果の概要は以下のとおりである。 1.アンダーセン式ハイボリウムダストサンプラーを用いて1993年から1998年にわたって採取した大気浮遊塵試料について(1分析試料あたりの採取期間は1〜8カ月でこの間の大気処理量は5〜19万m^3),採取期間と粒径画分ごとの試料の97%(30〜950mg)を用いてPu-239,240を分析し,同3%を用いて鉄の中性子放射化分析を行った。 2.各大気浮遊塵試料から分離したPuフラクションの電着線源について1〜3カ月間のα線スペクトロメトリーを行い,Pu-239,240濃度は0.1〜10μBq/mg-浮遊塵の範囲で変動することを明らかにした。 3.各大気浮遊塵試料の中性子放射化分析により,鉄濃度は2〜30μg/mg-浮遊塵の範囲で変動することを明らかにした。 4.大気浮遊塵中のPu-239,240濃度と鉄濃度の相関関係から,細粒フラクションでPu/Fe比が高いことが分かり,Puは浮遊塵の表面に吸着していることが明確になった。 5.大気浮遊塵中のポロニウム-210/鉛-210放射能比を解析した結果,時期と粒径に系統的に依存することなく9〜140日間の浮遊時間が評価され,上記でPuと鉄を分析した大気浮遊塵は飛程が長いことを確認した。Pu-239,240の測定に長期間を要するため,今後も未測定電着Pu線源の測定を続ける必要がある。
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