研究概要 |
本研究では、同時熱分解メチル化法(TMAH法)の海洋堆積物試料での基礎的検討として、(1)環境指標化合物の検索、および(2)国際深海掘削計画ODP第167次航海で得られたカルフォルニア沖堆積物を用いて,過去約3万年間の古環境変動を高分解能解析の第一段階を行った。また、(3)TMAH法の応用として、福島県会津坂下町森北古墳の解析も行った。 (1) 陸上高等植物起源のものとして,C20-C32脂肪酸,リグニン(バニリル類,シリンジル類,シンナミル類),クチン酸(3種),ステロ.ル類などが見出された。また海洋起源のものとしてC12-C18脂肪酸,ステロ.ル類、フィトール、クチン酸類(6種、このうち3種は新たな化合物)などが,さらに新化合物としてシクロヘキシルアルコール類(9種)などが検出された。 (2) 全有機炭素量(TOC)は現在から次第に減少したが,1万.1万1000年前のヤンガ.ドリヤス期に急激に減少し,1万2000年前から1万5000年前の最終氷期に増加する特徴を示した。リグニン量は現在からゆっくりとした減少が見られたが,約1万2000年以前の氷期には明確な増加が見られた。この時期にはこの付近に河川が発達していたと推定されており,そのために陸上有機物の輸送量が高くなったことが示唆された。リグニンのシリンジル類/バニリル類の比(被子植物の寄与の大きさの指標)の変動から,1万6000年前から現在に向かって被子植物の寄与が次第に増加してきたことが明らかになった。 (3) 森北古墳の解析では、被葬者の位置の特定、繊維種の特定、棺材の特定および現在と古墳時代の植生の違いについて、解析を行い、TMAH法の手法が有用であることが明らかになった。
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