研究概要 |
1. Ti:Sapphireレーザーの短パルス化とキャビティダンパー導入による繰返し周波数低減化 76MHzの高繰返し励起では試料に与える熱的影響が大変大きく再現性のあるデータが得られないことがわかった。そこでレーザーロッドを分散の少ない短いもの(0.25%Ti,3.6mm)へ交換することで短パルス化をはかるとともに、キャビティダンパーを導入して繰返し周波数の低減化(10k-10MHz)と同時にパルス当たりのエネルギーを上げる装置改良をおこなった。短パルス化に伴うレーザー共振器とブラッグセルの位置調整が大変むづかしく長期間を要したが、なんとか安定な発振に成功することができ、ブラッグ回折効率約50%で単一パルスのエネルギーも10倍近く(35fs,20nJ/pulse)に向上させることができた。 2. 錯体結晶薄膜および複核錯体での高速正逆電子移動速度の測定。 光電導素子として注目されているオキソチタニルフタロシアニン結晶膜(100nm厚)やプルシアンブルー型混合原子価錯体についてポンプ・プローブ法による測定をおこない緩和と電子移動反応の減衰・回復過程における位相緩和情報を取り出すべく努力しているが、現在の所SNが悪く成功していない。 3. Ru-Os混合結晶での励起移動およびエネルギー移動の速度の評価と機構の研究 高濃度混合結晶[Os_xRu_<1-x>(bpy)_3](PF_6)_2(bpy=2,2′bipyridine)でのRu(II)(ドナー)からOs(II)(アクセプター)への光エネルギー移動について、上記で製作したレーザーシステムを用いて時間相関単一光子計数法により発光のダイナミックスを測定した。高濃度にドープされたOs(II)存在下での高速発光減衰曲線をRu-Ru間の励起移動を考慮したランダムウオークモデルでシュミレーションすることに成功し、励起移動およびエネルギー移動速度の距離依存性について明らかにした。またその機構はどちらも電子交換機構であることが明らかになった。
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