研究概要 |
平成9年度は,H_4Ru_4(CO)_<12>に関して,英国Exeter大学において開催された第13回国際NMR分光学会で成果を発表した.(Polyhedron誌に発表) 引き続いて平成10年度において,(NMe_4)_<4-x>[H_xNi_<12>(CO)_<21>]・S(X=1,S=Me_2(CO);x=2,S=1/2THF)に関してNMRとX-線構造解析を行った.その結果,溶液中のクラスター構造と異なりNi_<12>-H_2化合物の結晶中ではNi_<12>クラスター中央のNi_6平面に対して6個のカルボニルが上下に交互にずれるように配位していることがわかった.一方,Ni_<12>-H化合物の結晶試料の場合,中性子回折によると(Ph_4P)^+塩ではヒドリドは二つの八面体サイトの一方に片寄っている.さらに,(NMe_4)^+塩のX-線構造解析によると結晶中では21個のCO基はすべて非等価であることがわかった.カルボニル領域の^<13>CCP/MASスペクトルはNi_<12>-H_2化合物よりさらに複雑になった.ヒドリドが二つの八面体サイトの一方に片寄っているために,溶液中でTi,To,Boに帰属されるピークがそれぞれ2本に分裂し,Biに帰属されるCO基が4本のピークを示すことが明らかになった.結晶中の陰イオンクラスターのpackingによりクラスターの構造がわずかに歪み,それが^<13>CCP/MASスペクトルに敏感に反映されることが示された.溶液中ではヒドリドが二つの八面体サイト間を交換するけれども,結晶中ではこの交換がほとんど起こっていないこともわかった.(J.Organometal.Chem.誌に発表) さらに,前年度に行ったH_4Ru_4(CO)_<12>,H_4Ru_4{P(OCH_3)_3}(CO)_<11>についての研究も含めて,これまでの多核遷移金属クラスター化合物のCO/H配位子のダイナミクスと固体NMRに関して総合報告をJ.Chem.Soc.Dalton Trans.誌に投稿中である.
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