研究概要 |
1)独自に改良を加えた電子移動光酸素化反応の手法によって,芳香族基を有する種々の単環性及び双環性1,2-ジオキソランや1,2-ジオキサン類の合成を行い,これまで未知の誘導体については新規な合成法を確立するとともに,既存のものについては収率の向上を達成した。 2)上記の環状過酸化物の直接光分解反応では,O-O結合開裂で酸素ビラジカル中間体が発生し,それが転位反応やフラグメンテーションを起こすことを明らかにした。また,p-メトキシフェニル基のような電子供与性基を有する場合には,芳香族基に特有なアリール基シフトが起こることを見い出すとともに,このような転位が骨格の異なる環状過酸化物に対しても一般的に起こる現象であることを示した。 3)上記の環状過酸化物の熱分解反応では,O-O結合開裂で生成した酸素ビラジカル中間体を経由する経路と協奏的な結合開裂による分解経路が同時に起こることを明らかにした。 4)ピリリウム塩を用いた光増感電子移動反応によっても環状過酸化物は結合開裂を起こすが,直接光照射反応とは異なり,C-O結合開裂によって炭素―酸素ビラジカル中間体を発生し,そこから転位生成物や分解生成物が得られることを明らかにした。 5)非光化学的一電子還元系としてFe(II),(III)との反応を検討した。O-O結合開裂により鉄の配位したモノオキシラジカル中間体が生成し,そこから転位反応や分解反応が起こることを見い出した。また,この中間体は,光反応で発生する酸素ビラジカル中間体とは異なる反応挙動をすることを見い出した。さらに,本研究で合成した各種環状過酸化物には抗マラリア活性があることから,Fe(II),(III)による分解機構研究が新規抗マラリア化合物の創製と密接に連携していることを示した。
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