研究概要 |
8員環のまわりに2つの5員環が縮合した完全不飽和炭化水素、ジシクロペンタ[a,d]シクロオクテン(1)及びジシクロペンタ[a,c]シクロオクテン(2)、と3つないし4つの5員環が縮合した炭化水素並びにイオン種化合物の合成について検討した。 1については短段階の合成経路を確立し、その構造について平面性が高く反磁性的な芳香族的な性質(diatropic)を持つこと明らかにするとともに、二三の物性に関する検討を加えた。なお、本研究費で購入した熱反応装置並びにGC分析装置は合成経路の開発における迅速な研究推進に卓越した効果をもたらした。 これに引き続き、異性体である2の合成を以下の二つの経路で検討した。一つはジメチルアミノフルベンをその1位で二量化した後、ジメチルアミノ基をビニル基ないしその等価体と置換し、電子環状反応によって骨格形成し、最終的にもう一つのアミン基の脱離を経て目的物に至るルートある。この合成経路の初段階についてはジメチルアミノフルベンのクロロスクシイミドによる塩素化とそれに続くニッケル錯体を用いた二量化までには成功したが、予想に反してビニルアニオンとの付加反応が進行せずこの経路での合成を断念した。もう一つの経路として、シクロペンタ[b]チアピラン(チアレン)の硫黄部酸化物とフルベンとの環状付加反応による経路を計画し、原料となるチアレンの簡便な合成法を種々検討した。6-(ジメチルアミノビニル)フルベンと硫黄との熱反応による新たなチアレンの合成法を見出したが、グラムスケールでの合成には向ず、後者の経路も半ばにてその合成を断念せざるを得ない結果となった。 さらに、8員環のまわりに3つないし4つの5員環が縮合した炭化水素並びにイオン種化合物の合成についても検討した。拡張性を考慮してフルバレニルジアニオンと種々のジカルボニル化合物との縮合反応による合成計画を立案したが、予備検討を行った段階に留まった。 なお、ジシクロペンタオクテン類について化学計算をもとに構造と化学反応性についても調べた。
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