研究概要 |
1. γ-置換アリルスズとカルボニル化合物との付加反応において、カルボニル化合物を光で活性化しγ-置換アリルスズとの一電子移動反応を利用するとγ-置換アリル基のα位でカルボニル炭素との炭素-炭素結合形成が可能であることを明らかにした。即ち、(E)および(z)-γ-置換アリルスズ存在下でカルボニル化合物の励起光を照射すると、(E)-体のスズ試剤からは(E)-体のアリル基が、また(Z)-スズ試剤を用いると(Z)-アリル基の立体化学が保持されてカルボニル炭素にアリル基が導入される新規な位置・立体制御反応系が見いだされた。この光カルボニル-アリル化反応でのα-位置選択性において、γ-置換アリルスズの光1,3-転位は全く起こらないが、γ-置換アリルスズの励起光下ではスズラジカル補足剤である酸素やハロゲン化アルキルを共存させることで、光1,3-転位が起こることも初めて明らかにできた。 2. さらに、鎖状化合物の位置・立体化学制御を目的とした方法論として、ペンタジエニルスズとα-アルコキシアルデヒドとのルイス酸誘起反応において、四つのジアステレオマー(syn,anti-γ付加体とsyn,anti-ε付加体)をα-アルコキシ保護基と用いるルイス酸および反応溶媒を適当に選ぶことにより位置選択性と立体選択性の同時制御反応系を見いだした。例えば、α-Bn保護あるいはα-MOM保護したアルデヒドではルイス酸としてMgBr_2またはBF_3OE_2を用いるとε-syn体が、SnCl_4またはInCl_3を用いるとγ-syn体が、またTBS保護したアルデヒドではBF_3OE_2を用いるとε-anti体が,InCl_3を用い溶媒にエタノールを使用するとγ-anti体が得られるように四つのジアステレオマーの作り分けが可能となった。
|