研究概要 |
多くの硫黄原子を含んだ拡張π電子系ジチオレート配位子を有する種々の金属錯体を合成し、その酸化によって新規な電導体を得て、その特性を明らかにした。 ○ 5配位四角錐構造の[NEt_4]_2[Mo(O)(etdt)_2](etdt=C_8H_4S_8^<2->)を新たに得た。その酸化体[NEt_4]_<0.3>[Mo(O)(etdt)_2]および[Fe(C_5Me_5)_2]_<0.05>[Mo(O)(etdt)_2]は高い電導度(それぞれ0.29および5.9Scm^<-1>,室温、粉末加圧成型試料)を示した。酸化体においては、etdt-配位子間でのS-S相互作用が電導経路形成に効果的である。 ○ dmit(C_3S_5^<2->)およびetdtをもつ有機コバルト(III)と-チタン(IV)錯体を検討した。 Co(L)(dmit)(L=η^5-C_5H_5,η^5-C_5Me_5)の臭素酸化の挙動およびその1電子酸化体Co(η^5-C_5Me_5)(dmit)Brの結晶構造を明らかにし、さらに酸化されたdmit配位子間での強い反強磁性的相互作用を明らかにした。 Co(η^5-C_5H_5)(etdt)およびTi(η^5-C_5H_5)_2(etdt)錯体を合成し、その酸化体の性状をしらべた。とくに[Co(η^5-C_5H_5)(etdt)]I_3および[Co(η^5-C_5H_5)(etdt)][PF_6]_<0.7>が高い電導度を示した(それぞれ0.19および0.16Scm^<-1>)。 ○ dmit-およびetdt-ルテニウム(II)錯体の酸化体の導電性をしらべた。6配位構造のかさ高いRu(bpy)_2(dmit)およびRu(bpy)_2(etdt)(bpy=2,2′-ジピリジン)を合成し、とくにヨウ素との反応で得られた酸化体[Ru(bpy)_2(etdt)]Iおよび[Ru(bpy)_2(etdt)]-(I_3)_<2.1>の電導度は7.4x10^<-7>および2.0x10^<-4>Scm^<-1>であった。2つのbpy分子が配位したきわめてかさ高い構造であっても、錯体のetdt配位子部位での酸化が進めばetdt配位子どうしの接近による分子間相互作用が効果的になることがわかった。
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