研究概要 |
ポルフィリンのダイマーは多電子酸化還元系の構造ユニットとして注目され、近年、多くの誘導体が報告されている。ポルフィリンの周辺部置換基を利用して、2つのポルフィリンを共有結合で連結する有機化学的合成法、2つの金属ポルフィリンの金属-金属間を配位子で連結する錯体化学的合成法が利用されているが、2つのポルフィリンの面間距離や配向等の構造要素と多電子酸化還元機能との間には密接な関連があると考えられるので、本研究では従来にない新規な構造を持つビスポルフィリンを開発し、その有用性を示すことを目的とした。研究成果は以下の3点である。(1)コバルトポルフィリンとアセチレンとの1段反応により、2つのポルフィリンのピロール窒素がビニレン基で共有結合できることを独自に見いだしていたが、このCH=CH-N,N'連結構造を持つビスポルフィリンの合成反応の適用範囲を明らかにし、その実験条件と収率を確立した。(2)亜鉛、銅、コバルトを含む異種多核のビスポルフィリンを収率よく合成し、X線結晶構造解析も含めて、それらの分光学的性質と構造を明らかにした。(3)亜鉛、銅、コバルト、鉄を含む新規な3層、4層ポルフィリンが簡便に合成できることを示した。特に、鉄の場合はミューオキソ2鉄構造とCH=CH-N,N'連結構造の組み合わせによって特徴ある4層ポルフィリンを得た。 以上のように、特徴あるスペーサーを持つビスポルフィリンは積層分子系の構造ユニットとして極めて有用であり、多彩な構造の積層ポルフィリンオリゴマーの合成が容易に行えることを示した。更に高分子系への応用も可能であると考えられる。
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