研究概要 |
1. ニトロシル錯体として最も普通に知られている(Ru^<II>-NO^+)部位を含む{RuNO}^6型錯体を化学的に還元して、形式上(Ru^<II>-NO^-)を含む新規2電子還元種({RuNO}^8型錯体:[{Ru-(μ-NO)_2}_2(bpy)_4]^<2+>)を単離し、X線単結晶解析法によりその構造を確かめた。 2. この複核錯体を酸化して[{Ru(μ-NO)_2}2(bpy)_4]^<4+>とし、酸化に後続する化学反応を追跡する過程で(Ru^<II>-NO^0)を含む{RuNO}^7型錯体(cis-[Ru(NO)(CH_3CN)(bpy)_2]^<2+>)の生成に付随してニトロ錯体(cis-[Ru(NO_2)(CH_3CN)(bpy)^<2]+>)を生じるという予期せざる結果を得た。 3. 本研究で見出したニトロシル錯体からニトロ錯体への変換反応は従来の概念いない新しい反応である。この反応のkey錯体種と思われる(Ru^<II>-NO^0)を含む{RuNO}^7型錯体の挙動を検討するため、一連の{RuNO}^6型錯体(cis[Ru(No^+)(X)(bpy)_2]^n(X=H_2O,CH_3CN,ONO_2,HCOO,CH_3COO,NO_2,Cl,py))について1電子定電位電解還元を行い、生成した{RuNO}^7型錯体の化学挙動を追跡した。その結果、これらの錯体はそれらの化学挙動に基づき (1) 容易にニトロシル-ニトロ変換反応を起こすX=ONO_2,OH_2,CH_3CNの錯体 (2) きわめて微量のニトロシル-ニト口変換反応を起こすX=HCOO,CH_3COOの錯体 (3) ニトロシル-ニトロ変換反応を起こさないX=ONO,NO_2,Cl,pyの錯体 に分類でき、各分類ごとの化学挙動を総合的に検討することにより、新規ニトロシル-ニト口変換反応の機構について一応の仮説を提示する事ができた。
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