研究概要 |
p-ブロック元素同士が結合したクラスター骨格をもっZintl化合物とそれから誘導されるヘテロポニアニオンクラスターの結合と電子状態知見を得るために研究をおこなった.この目的のために,Zintl化合物の合成とヘテロポリアニオンクラスターの電気分解法による合成を試みた.種々の電解条件を検討したが,結局目的の化合物を得ることはできなかった. Zintl化合物の合成においていは,合成条件の検討から研究を始めた.最終的には,アルミナ製の容器を用いて,調和融点を持つものは化学量論比の成分元素を含む融体から結晶化させることで,K-Sb,Na-Sb系のZintl化合物(M_3Sb,MSb,KSb_2),Mg_3Sb_2,CaZn_2Sb_2およびAgSbTe_2を得た.遷移金属との二元系化合物Cu_3Sb,Cu_2Sb,Ag_3Sb,AuSb,ZnSb,Zn_4Sb_3なども,成分元素の融体から結晶化させて得た.そのほか文献記載の方法を模倣してK_3SbTe_3やLiSbTe_2の合成も試みたが,純粋な化合物は得ることができなかった.またZintl化合物の合成に手間取り,抽出法によるZintlイオンの合成は試みることができなった. Zintl化合物の^<121>Sbメスバウアースペクトルから,M-Sb系(M=Na,K)におけるM_3SbやMg_3Sb_2のアンチモンはSb^<3->で表されるイオン性の化合物であるのに対して,MSbやKSb_2ではアンチモン原子間の共有結合性が大きく,負電荷はおもにアンチモンの5p軌道が受け持っていることが明らかになった.アンチモンが受けとった負電荷の数は,MSb_2<MSb<M_3Sbと化学式から予想される順であり,結晶全体とするとイオン結晶としての性質があることがわかった.アンチモンと遷移金属の金属間化合物では,アンチモンと遷移金属間の共有結合性が大きいことも明らかになった.
|