研究概要 |
14属元素の低酸叱状態であるSn(II)やPb(II)はp軌道を用い6個の配位子(D)と弱い共有結合を形成する。この結合はハイパーバレント結合と呼ばれ3中心4電子結合したtrans D-Sn(Pb)-Dが3つの互いに直交する方向に形成されているものと解釈できる。この結合は周囲の静電的環暁や温度により変形しやすく,固体においてはこの特性を反映して,電子伝導性やイオン伝導陣を示す結晶があることを見出した。 ペロブスカイト構造を持つCsSnBr_3やCH_3NH_3SnBr_3は電子伝導性を示した。とくにCsSnBr_3は金属光沢を持った黒色の結晶であり,その導電率は10^2Scm^<-1>と高く,温度の減少で導電率が増加する金属的な温度依存性を示した。^<119>SnNMRのスペクトルと緩和時間にもこの結晶の金属的特徴が観測できた。カチオンのイオン半径がCs塩にくらべ大きなCH_3NH_3SnBr_3では室温で半導体的な伝導性を示す。この結晶は229Kで相転移し,低温では対称心が消失したtrans Br-Sn…Br結合を形成し,導電率は大きく減少し,その色も赤から黄色に変化する。さらに,カチオンを大きくすると,立方晶に転移することなく,歪んだペロブス力イト構造を取ることが明らかになった。これらの塩では対称心のないtrans Br-Sn…Brが形成されており,孤立したピラミッド型SnBr_3アニオンの存在が^<81>Br NQRや^<119>SnNMR測定から確認できた。 一方,Sn(II)やPb(III)のフッ化物であるKSn_2F_5やRbPbF_3の結晶は高いイオン導電率を示した。また15属元素を中心金属とした,KSbF_4の高温安定相にも,高いイオン伝導性が確認できた,これらのイオン伝導性はハイパーバレント結合の特徴的な弱い共有結合や配位子間のトランス効果が大きく関与しているものと思われる。
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