研究課題/領域番号 |
09640692
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
機能・物性・材料
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
内田 欣吾 龍谷大学, 理工学部, 助教授 (70213436)
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研究期間 (年度) |
1997 – 1998
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研究課題ステータス |
完了 (1998年度)
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配分額 *注記 |
3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
1998年度: 1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
1997年度: 1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
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キーワード | フォトクロミズム / ジアリールエテン / 反応性 / 置換基効果 / 媒体効果 / 置換位置 / コンフォーマー / 分子設計 / 分子設計指針 |
研究概要 |
ジアリールエテンは無色の開環体と着色した閉環体との間で光異性化反応を繰り返すフォトクロミック化合物である。本研究では、その電子的状態と両異性体の立体構造がその反応性とどのように相関しているかを明らかにすることを目的とした。 ジアリールエテンの芳香環上のエテン部との置換位置を従来の3位から2位に変えると、開環体の吸収は長波長化し、閉環体の吸収は短波長化した。これは芳香環の種類がチオフェンだけでなくチアゾールのようなヘテロ5員環にも共通する特徴であった。またこれに伴い、化学的安定性も良くなった。一般にチオフェン、フラン、ピロール等に代表されるヘテロ5員環では、ヘテロ原子に隣接する2つのα位の電子密度は、それらの隣のβ位の電子密度よりも高くなっている。以前、ジアリールエテンの分解はへテロ5員環のα位へのエンドパーオキシドの付加によるとした報告があるが、これはエンドパーオキシドの付加は電子密度の大きな部分の方に反応しやすいからである。2位でエテン部と結合した誘導体では、2位が強力な電子吸引性であるベルフルオロシクロペンテン環と結合しているため、この部分に電子供与性のメチル基がついた従来の誘導体に比ベエンドパーオキシドの付加は起こりにくくなったものと考えられる。このように優れた耐久性をもつ誘導体の新たな合成指針が見いだされた。 ジアリールエテンの開環体にはアンチパラレル型とパラレル型の2つのコンフォーマーが存在し、光閉環反応はこの内のアンチパラレル型コンフォーマーのみから進行する。ペンゾチオフェン環をアリール基にもつジアリールペルフルオロシクロペンテン誘導体のメチル基をさらに嵩高いイソプロビル基に変換した誘導体を合成し、その^1H NMRを測定すると光反応性のアンチパラレル型の存在比がメチル誘導体の65%から94%に増加していることが分かった。このことを反映し、光閉環反応の量子収率は、0.35から0.52の増大した。これは、反応性の高いフォトクロミック化合物を合成するための指針になる。 また液晶を反応場に用いた研究では、相転位温度以上で等方相中のジアリールエテンは反応性コンフォーマーへと異性化でき、フォトクロミズムを示したが、相転位温度以下の液晶相だと反応性コンフォーマーへの変換に必要な空間自由体積が確保できず反応性が落ちた。温度をしきい値とするフォトクロミック反応系の構築が示唆された。このような分子構造や反応場が反応性に及ぼす効果が明らかになった。
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