研究概要 |
小さな分子程度の微小細孔をもつゼオライト・界面活性剤複合体による吸着可溶化および吸着可溶化された蛍光プローブ間でのエネルギー移動を測定した。ローダミンBはゼオライト・界面活性剤複合体に可溶化されると、水溶液中におけるよりも約40kJ/molだけ安定になることがわかった。また、エネルギー移動に伴う蛍光プローブの消光比を解析して、界面活性剤集合体のサイズを見積もったところ、水溶液中における界面活性剤ミセルと同じ程度であった。 ここで得られた知見に基づいて、ナノメーターサイズのメゾ細孔をもつFSM・界面活性剤複合体を合成して、その性質をXRDおよび蛍光プローブ法で調べた。柔らかい層状結晶であるカネマイトの層間イオンを界面活性剤ミセル溶液中で交換して,数ナノメートルの均一孔に界面活性剤イオン集合体を充填した無機・有機複合体微結晶を合成した。界面活性剤の疎水鎖長が大きくなると孔径サイズも大きくなった。この複合体に蛍光プローブであるピレンとプロフラビンを吸着可溶化すると、これらのドナー・アクセプターペア間で効率のよいエネルギー移動が起こることがわかった。観測されたデータを解析して,200個以上の界面活性剤イオンからなる集合体が形成されていることがわかった。 一方,界面活性剤ミセルをテンプレートとして、ガラス板上に数ナノメートルの間隔を有するシリカの層状薄膜を合成した。この層間の界面活性剤集合体に各種の蛍光プローブを可溶化吸着させてその蛍光スペクトルおよびその偏光スペクトルを測定した。偏光解消度を求めたところ溶液やミセル溶液に溶解した場合よりも大きな値を与えたが、固定配向した場合よりも小さな値を与えた。この事実は、固相に形成されるナノメートルサイズの界面活性剤集合体の中でも、溶解したプローブは運動の自由度を有していることを示唆した。
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