研究概要 |
1.液体アルケン中の電子移動度μの測定 1-ペンテン,シクロヘキセン,2-メチル2-ブテン,2,3-ジメチル2-ブテン中のμを温度0〜80℃,圧力1〜3,000barの範囲で測定した。μの値(cm^2/Vs)は1-ペンテンと2-メチル2-ブテンでは温度に依らず圧力と共に一様に減少し,前者で0.25-0.02,後者で5-20であった。シクロヘキセンと2,3-ジメチル2-ブテン中のμは複雑な圧力依存性を示し,特に後者では0℃から8から12まで増加する。このような圧力依存性の違いは,等温圧縮率χの大きさの違いに起因し,χ値の大きい1-ペンテン等では電子局在化による媒質の電縮が局在化電子の作る空洞の体積を上まわるのに対して、χ値の小さいシクロヘキセン等ではその逆が起こるためと考えられる。 2.超臨界流体中の電子移動度μの測定 エタン中のμを温度33-47℃,圧力40-120barの範囲で測定した。μは圧力増加と共に指数関数的に減少するが,各温度で圧縮率極大となる圧力付近で極小を通る。臨界点に近い33℃,48bar付近で極小は最も著しい。極小付近のμ値の大きさ(50-100cm^2/Vs)から過剰電子は準自由状態にあることは明らかであるから,この極小は密度揺らぎによる散乱の極大の結果である。 3.電子付着反応速度の測定 超臨界エタン中でNO,CO_2,C_2F_4について測定した。CO_2について,ブルックヘブン国立研究所のレーザー電子線加速器からの10ピコ秒パルス照射により電子付着-,離脱反応速度を測定できたが,NO,C_2F_4についてはこのパルス幅でも離脱反応を観測できなかった。CO_2について付着-脱離平衡定数を温度・圧力の関数として決定,ΔG_r,反応体積変化ΔV_rを,NO,C_2F_4について付着反応に対する活性化体積ΔVa^*を求めた。CO_2に対するΔVr値は圧縮可能連続体モデル(Compressible Continuum Model)により求めた理論値と良い一致を示すが,NO,C_2F_4の場合のΔVa^*は理論値のおよそ半分で,活性錯合体がRydberg状態に近く大きいためと,周辺の媒質が十分緩和していないことを示すものと思われる。 なお測定の一部にブルックヘブン国立研究所の加速器を使用した。
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