研究概要 |
本研究においては主に、1)π受容性に富みかつ両末端に配位能を有する新規な配位子の設計・合成を行い、2)その配位子を用いて遷移金属イオンとの配位超分子を形成しその単結晶化および構造決定を行う事を目的として研究を推進してきた。その結果、以下のことを明らかにした。 1.1,4-ナフトキノンジイミンを用いた銅及び銀錯体の合成と構造 強いπ受容性を有するこの配位子を用いて銅(I)と錯形成を試みたところ錯形成が非常に速くすぐに黒色沈澱を生じた。この沈澱の電気伝導性はσ=10^<-2>Scm^<-1>であった。これは銅(I)が銅(II)に酸化され電荷移動を起こしているものと思われるが構造は明らかに出来なかった。一方、銀(I)イオンとの錯形成においては黄色結晶が得られその結晶構造解析の結果、銀2核に架橋した2量体構造であることがわかった。伝導性はなかった。 2.2,3-ジシアノナフタレン(2,3-dcn)を用いた銀(I)錯体の構造 この配位子と、種々の銅(I)及び銀(I)との錯体生成を試みたが、単結晶構造解析が可能な大きさの結晶が得られたのは、AgClO4の場合のみであった。得られた構造は2つの銀(I)に22つの2,3-dcnが架橋配位した2量体を形成しており、そのパッキングの仕方は結晶化に用いた溶媒により異なっていた。THFを用いた場合にはClO4イオンで架橋された2次元構造を形成していたのに対して、2-MethylTHFを用いた場合には各銀イオンにさらにもう一つの2,3-dcnが単座配位した2量体を形成していた。
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