研究概要 |
1. 多機能型・単一分子電線の新規構築ブロックの開発: 単一分子エレクトロニクスは、分子物質科学における「今世紀最後のフロンティア領域」である。本プロジェクトでは、高性能・単一分子電線の構築用に、様々なタイプのヘテロ環・構造ブロックの開発を行った。これらの構造ブロックの選択的カップリング反応により、正確に構造制御されたヘテロ環系高次オリゴマー(11量体、分子量3000まで)を合成した。これらが有する機能部位は、長距離電子輸送に適した低エネルギー型パイ共役骨格、分子電線間の不必要な荷電キャリアー移動を防止するための絶縁層部位、ドナー・アクセプターサイト、多段階酸化還元系サイト、電極接続用の端子等である。スペクトルデータ、及び分子軌道計算結果より、得られた新規分子ワイヤーについての構造一物性相関を明らかにした。 2. 新規な四端子型・分子スイッチユニットの開発: 「分子計算機」の根幹素子である4端子型分子スイッチの基本モジュールとして、多段階酸化還元系を含む新規ヘテロ環ユニット(1,3,5,7-テトラチエニル-ジチエノ[3,4-b:3′,4′-e]ピラジン)の合成を行なった。この構造ブロックのスイッチング反応(電子一プロトン移動反応)に伴う電子スペクトルの吸収極大位置の変化は、360nm(3.44eV)<=>1062nm(1.17eV),Δ=2.27eVと極めて顕著であることが分かった。分子軌道計算による検討の結果、ジチエノ[3,4-b:3ユ,4ユ-e]ピラジン環部の電子構造変化と系全体の共平面性の変化が、この大きな電子状態変化の要因であることが分かった。各種分子電線をこのユニットの各端子に選択的に接続するための手法を、現在検討中である。
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