研究概要 |
対称化合物の不斉アシル化による非対称化は、その方法論の興味深さとともに高い選択性でアシル化生成物が得られる場合には、有用な生理活性物質のキラルビルディングブロックの合成に利用することができる。そこで、モレキュラーシーブス(MS4A)と、ジオールに対して0.5mol%の(S)-プロリンから誘導されるキラルなジアミンと、1当量のトリエチルアミンの存在下、シス-1,2-シクロヘキサンジオールに1.5当量の塩化ベンゾイルを-78℃で反応させて不斉アシル化を行った。その結果、対応するモノ安息香酸エステルが化学収率84%、光学収率96%eeで得られた。種々の対称1,2-ジオールの非対称化を行ったところ、環状だけでなく鎖状の対称ジオールでも高エナンチオ選択的にモノアシル化が進行することを見い出した。 次に、この非酵素型触媒的不斉アシル化をラセミ第2級アルコールの触媒的不斉アシル化に展開した。その結果、キラルなジアミンを基質アルコールに対してわずか0.3mol%用いるだけで、高選択的でしかも超高効率に不斉アシル化が進行し、速度論的光学分割が実現できることを明らかにした。この触媒的分割はエステルやハロゲンなどの官能基を有するアルコールにも適用可能であった。 また、アキラルな1,2-ジアミンであるN,N,N′,N′-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)がアルコール類の塩化ベンゾイルによるアシル化の塩基として極めて有効であることを明らかにした。
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