研究概要 |
環境における微量成分の平常の存在量、存在状態、分布、移動・循環を明らかにすることは、環境汚染を速やかに把握するうえで極めて重要である。そのためには、高感度で選択性の高い分析法の開発が望まれている。接触分析法は、目的元素が循環再生して主反応に関与する反応を利用するため、化学量論的な反応を用いる従来の方法に比べて高感度であり、10^<-9>〜10^<-11>Mレベルの超微量の分析が可能である。本研究では a)3-メチル-2-ペンゾチアゾリノンヒドラゾン(MBTH)とN,N-ジメチルアニリン(DMA)及びその誘導体である新トリンダー試薬との過酸化水素による酸化カップリング反応を利用する微量鉄(II,III)およびコバルト(II)、b)N-フェニル-p-フェニレンジアミンとDNA及びm-フェニレンジアミンとの過酸化水素酸化反応を利用する銅(II)、亜硝酸イオン、c)3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン(TMBZ)の酸化反応を利用する鉄(II,III)、d)N-3-スルホプロピル-TMBZの臭素酸塩による酸化反応を利用するバナジウム(IV,V)、e)MBTHの過酸化水素による酸化反応を利用する鉄(II,III)、f)1,10-フエナントロリン(phen)共存下の鉄(III)とシステインとの酸化還元反応を利用する銅(II)の接触分析をそれぞれ開発し、これらの方法を標準試料や天然水中の各元素の分析に応用した。これらの分析法において、鉄(II,III)に対してはphen、バナジウム(IV,V)に対してはスルホサリチル酸、コバルト(II)に対してはタイロンが効果的な活性化剤として働き高感度な分析法を開発することができた。実試料の分析の一例として霞ヶ浦の水中の鉄の分析では、河川水の流入地点では濃度が高く、中央に近づくにつれて濃度が減少する結果が得られた。このことは鉄が水の流れとともに水酸化物として沈殿することや有機物との錯形成が原因と考えられる。
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