研究概要 |
本研究では,ガラスやセラミクスの低温合成法として知られているゾル-ゲル法により,生体機能性分子(酵素など)を包括した薄膜をマイクロアレイ電極に作製する方法について検討した. オルトケイ酸メチル(TMOS)など種々のケイ素化合物を用い,ゾル-ゲル反応の速度とpHとの関係などについて検討し,バイオセンサー作製のためのゾル-ゲル反応の作製条件を明らかにした.しかし,酵素分子がゲル格子から脱離しやすく,長期安定性に問題があった.そこで,作製した酵素含有ゾル-ゲル被膜をグルタルアルデヒド蒸気の中で2日間乾燥させ,包括された酵素分子を橋架けして高分子化することで,安定性が改善され,迅速な応答(応答時間:数秒)を与えるセンサーが得られたが,酵素の種類によっては活性が著しく低下した.そこで,アビジン分子がビオチン標識酵素と強固な複合体を形成することを利用し,TMOSをゾル-ゲルマトリックスとして,アビジン-ビオチン標識酵素複合体をシリカゲル薄膜中に包括したバイオセンサーを開発した.このセンサーでは,複合体が3次元的な立体構造をもつ巨大分子であるため,シリカゲル格子から抜け出さないことと,酵素分子に共有結合を導入せず生物親和力で複合体を形成しているので,高活性(高感度)で長期にわたり安定なセンサーが得られた.この方法で種々のマイクロアレイ電極に酵素レセプター薄膜を作製し,分子ふるい機能を持った有機電解重合膜をハイブリッド化して,グルコース,コレステロール,総コレステロール,尿酸などを検出できる医療計測用アレイセンサーや,オルトリン酸,総リン酸,アンモニアなどを計測できる環境計測用アレイセンサー,さらに魚肉や畜肉の鮮度センサーなどに応用した.
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