研究概要 |
本研究は平成9年度-平成12年度にわたって行われた. 新規植物成長調節物質,レピジモイドの植物体での生成および生理活性について,主にシロイヌナズナを用いて研究を行った. 1.HPLC,TLCなどを用いた分析によってレピジモイド様物質(以下LMと記す)はシロイヌナズナの種子,ロゼット葉,茎,根,花序,未熟果実など,植物体の大部分の器官およびナズナの種子に含まれていることが分かった. 2.LMはシロイヌナズナの胚軸伸長,子葉拡大,子葉葉柄伸長などを促進し,根の伸長を抑制するという二面的作用を持つこと,また,ロゼット葉,草丈,植物体生重量,植物当たりのさや数,種子収量などには抑制的に働くことが分かった.さらに,LMは花芽形成までの日数を早める効果を持つ.したがって,LMは花芽形成を早めることにより,植物体の生活環を早く終わらせる効果を持つことが分かった. 3.「仙台シロイヌナズナ種子保存センター」に維持されているシロイヌナズナ多数系統を用いて,LMへの反応の大きい系統を探索した.その結果,胚軸伸長および子葉拡大が強く促進される系統として2系統を選抜した. 4.アブラナ科植物の種皮細胞には特殊な隆起構造があることから,LMはこの構造から分泌されることが予想された.そこで,シロイヌナズナおよびその近縁種の種皮の隆起構造について形態的観察を行った,その結果,調べた10種すべてに粘質物を分泌する隆起構造が認められた.また,隆起構造を持たないシロイヌナズナ突然変異体の種子からも野生型の半分程度の量のLMが分泌されることが判明した. 5.シロイヌナズナから抽出したLMを種々の植物芽生えに投与したところ,植物種により,また,その生育状態により効果が大きく変わることが分かった.
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