研究概要 |
1.カサノリCl^--ATPaseについて a(54 kDA)及びb(50 kDa)サブユニットの全長をコードするcDNAを得た。bサブユニットを大腸菌F_1-ATPase,β欠損株で発現させた結果,酸化的リン酸化能の回復はみられなかった。bサブユニットの96-161アミノ酸部分が決定的に機能回復を阻害する配列を持つことを,キメラ蛋白質の解析により明らかにした。 2.カサノリV-PPaseについて cDNAクローニングにより得たV-PPase gene(AcVP)を酵母発現ベクターに組み込んだrecombinantを作成した。これらをS.cerevisiae BJ5459 strain(protease(-)株)及びprotease(+)株に導入し,transformantsを得た。このうち,発現量の最も多かったAcVP/pYES2/BJ5459細胞を回収,membrane fractionを調製した。C_<12>E_9で発現PPaseを可溶化後,Phenyl-Superose及びMono Qクロマトグラフィーにより部分精製を行った。発現PPaseのPPaseとしての性質はカサノリ粗液胞膜画分及びそれから部分精製した標品の示す性質と類似するものであった。 3.カサノリV-ATPase,proteolipid subunitについて 上記subunitをコードするcDNA6種をクローニングした(AACEVAPD 1-6)。これらのcDNAを酵母発現ベクターpESC-Leuに連結し,AACEVAPD 2,4及び5についてrecombinantを得た。これらを,酵母V-ATPase,proteolipid subunit欠損株(vma3-deficient strain)に導入し,transformantを得た。培養後,酸性小器官へのキナクリンの取り込みを蛍光顕微鏡で観察した。それぞれのtransformantで蛍光がみられ,カサノリV-PPase,proteo-lipid subunitの発現並びに機能のcomplementationが実証された。 4.カサノリABC transporterについて 生体膜を介する溶質の選択的な移動を媒介するATP-binding cassette(ABC)superfamilyのcDNAクローニングの結果,sulfate permeaseのCysA subunitの全長をコードするcDNAを得た。357アミノ酸をコードし,分子量40,679の蛋白質であり,シアノバクテリアCysA proteinに48.7%のidentityを示すものであった。即ち,バクテリアタイプの構造を有することが明らかになった。
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