研究概要 |
マウス子宮内膜細胞の細胞培養系を用いて,IGF-Iによる子宮内膜の機能発現および細胞増殖調節作用を調べるとともに,子宮内膜における上皮組織と間質組織の役割を解析した.上皮細胞と間質細胞が,IGF-Iを産生していることを免疫細胞化学的手法および,ノーザン分析により明らかにした.間質細胞におけるIGF-Iの発現調節を調べたところ,Estradiol-17β(E2,1 nM)投与24時間後に,IGF-I mRNA量の有意な増加が認められ,IGF-Iの発現は発情ホルモンにより産生が高まることを示した.間質細胞におけるIGF-I受容体の発現調節を調べた.E2(1 nM),progesterone(P,1 nM)およびE2+P投与48時間後に,E2+P投与によりIGF-I受容体mRNA量は有意に増加した.IGF-Iは,上皮細胞と間質細胞の増殖を促進した.間質細胞をコラーゲンゲル内で培養し,その上面で上皮細胞を培養し,in vitroで子宮内膜を再構成した.上皮細胞間には,細胞接着装置が観察された.上皮細胞の細胞増殖には,間質細胞と組合わせて培養しても顕著な変化はなかった.しかしながら,間質細胞と組合わせて培養した上皮細胞は,扁平型から立方上皮に形態変化をした細胞が多数認められた.これは上皮細胞の細胞増殖や機能発現への間質細胞の関与を示唆している. 子宮内膜のIGF-Iが,内膜細胞の細胞増殖を傍分泌的に調節していることが示唆された.IGF-Iは上皮細胞と間質細胞の増殖を促進するので,細胞増殖の調節にはIGF-I受容体の発現調節が重要である.間質細胞においては,IGF-I受容体mRNA量は,E2単独では減少するが,P単独,およびE2とPの同時投与により増加した.したっがって,両ステロイドホルモンの分泌のバランスにより,IGF-I受容体の発現が調節されていると考えられる.
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