研究概要 |
クロロフィルa+cをもつ生物群の多様性と系統関係を明らかにするため,褐藻,黄緑藻,渦鞭毛藻のそれぞれにおけるセルロースミクロフィブリルの形態およびセルロース合成酵素複合体の構造をフリーズフラクチャー法によって明らかにした. 褐藻(ミツデクロガシラ)と黄緑藻(フウセンモの一種)はともに特徴的な偏平なリボン状のセルロースミクロフィブリルを合成する.しかし,褐藻はサブユニットが一列直線状に配列する酵素複合体をもつのに対して,黄緑藻の酵素複合体では一定数のサブユニットの列が斜め階段状に複数配列することが明らかとなった.一方,黄緑藻の細胞壁には,今までに褐藻に特有と考えられてきたアルギン酸が存在することを免疫電子顕微鏡法によって初めて明らかにし,黄緑藻と褐藻が他のa+c植物よりも近縁な共通の祖先をもつことを示した.これらの結果は,黄緑藻と褐藻の酵素複合体の構造は両者が派生した時にどちらか一方,または双方の系統群で獲得されたことを示唆する.また,渦鞭毛藻類の鎧板にセルロースが含まれることを電子回折法によって初めて明らかにし,a+c植物だけでなく他の植物でも見られない繊細なセルロースミクロフィブリルの束が合成されることを示した.さらに,渦鞭毛藻(Scrippsiella hexapraecingula)において,新しい構造をもつ酵素複合体を初めて発見した.そのTCは2つのサブユニットが2列直線状に配列し,ランダムな方向にセルロースミクロフィブリルを合成することが明らかとなった.
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