研究概要 |
1)本研究は科学研究費補助金により1998-2000年に実施した。研究対象資料は沖縄県石垣島および西表島のイリオモテボタルおよび台湾のイリオモテボタルの1種,マレーシアの星虫Diplocladon sp,タイ産のイリオモテボタルの1種および北アメリカ産のZarhipis integripennis を比較対象とした。イリオモテボタルについては野外生態観察および採集して飼育を行った。発光行動は高感度8mmVTRカメラを駆使して録画し,解析した。遺伝子の解析はアルコール液浸資料から全DNA(核とミトコンドリア)を抽出し,ミトコンドリア16Sリボソーム〓NA遺伝子の5'側の約5000塩基をPCRによって増幅した。増幅されたDNAをプラスミドに組み込みクローン化した後に塩基配列を作成した。この時ベニボタルを外群とした。 2)イリオモテボタルの外部形態は雌において,各比較対象種に酷似した。特に台湾産の比較種は雄においても区別が困難であった。発光行動は雌成虫において全ての比較対象種が各体節にスポット状発光器を有し,抱卵保護行動が観察された。幼虫はすべてヤスデを餌とした。 3)遺伝的背景はイリオモテボタルに最も近いものは台湾産のイリオモテボタル,これらは次いでDiplocladonに近く,さらにこれらの外側にタイ産の比較種が位置付けられ,この外側にZarphipisが位置付けられた。タイ産のものはむしろ北アメリカ産に近いという結果を得,雌の発光行動や形態からみた背景とは異なった結果を得た。
|