研究概要 |
ニホンザルの胸腰部の固有背筋の機能形態学的解析を目的として,これらの筋について筋線維タイプ構成,筋束構成、および筋構築を検索した.以下,筋線維タイプ構成と筋束構成および筋構築に分けて研究成果を報告する.1)胸椎上,中,下部および腰椎上,中,下部の高さで固有背筋を構成する各筋の全断面にわたって筋線維タイブ構成を検索した.その結果,腰部においては外側に位置する仙練筋ではtype I線維(slow twitch線維)は少なく,type II線維(fast twitch線維)が優位を占めていた.内側の棘筋-横突棘筋系では表層はtype II線維優位であったが中心部はtype I線維を比較的多く含んでいた.仙棘筋の内側深部にはtypeI線維を70-90%の高密度に含む領域が観察された.これらの領域はごく近くの椎骨間を結ぶ短い筋束に相当した.胸部においては外側に位置する腸肋筋は比較的type I線維が多く,その内側に位置する最長筋はtype II線維が優位であった.また,最内側に位置する棘筋-横突棘筋系は胸部の3筋の中では最もtype I線維が多かった.2)胸部の固有背筋を構成する胸腸肋筋,胸最長筋,胸棘筋の筋束構成と筋構築を検索した.これらの筋を構成する起始,停止を異にする単一の筋束ごとに,その起始,停止および筋束長,筋束重量などを記載し計測したところ,外側に位置する腸肋筋は比較的近くにあるセグメント間を結ぶ多数の短い筋束より構成されていた.その内側にある最長筋は遠くにあるセグメント間を結ぶ長い筋束より構成されており,また胸椎下部で大きな筋量を占めていた.最内側の棘筋は比較的長い筋束より構成されていた.筋束構成,筋構築,および筋線維タイプ構成を総合すると,胸腰部の固有背筋を構成する各筋および筋内部位間で機能的分化があることが推測された.
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