| 研究概要 |
最近,ガウス的スペックルの範疇において従来の常識とは異なる特異な現象が幾つか発見されている.本研究は,そのような特異なスペックル現象の統計的性質およびその発生条件を,理論,実験および計算機シミュレーションにより解明することにより,ガウス的スペックル現象の理論体系をより完全なものにすることを目的としている.
1. 構造化スペックルの発生機序の解析
円環スリットによりマスクされた粗面のレンズによるフーリエ変換面に生じる構造化スペックル(スペックルの鎖状クラスタ構造)の発生機序を探るため,照射条件に対するスペックルの空間構造の依存性を実験により調べた.等方的にランダムなスペックルクラスタ構造が,完全な円環スリット構造の反映であることが示された.また,スペックルクラスタが,円環スリットの回折パターンの多数のランダムな干渉により生じることを計算機シミュレーションにより明らかにした.さらに,粗さの小さな粗面による未発達な構造化スペックルの発達過程を実験により明らかにした.
2. 軸方向長相関スペックルの解析
円環状照明による構造化スペックルが光軸方向に極めて長い空間相関を示すことを,非回折性ビームとして知られるベッセルビームの形成との関係から理論的に示し,さらにそれを実験により検証した.
3. フラクタル的スペックルの生成
ランダムなフラクタルと一様な散乱体による二重散乱スペックル現象において,第二散乱体のフーリエ変換面に生じる強度分布の相関関数がほぼべき関数に従うことを実験により示し,以前に導出した理論的予測を検証した.これは,この面内の強度分布がフラクタル性を有することを意味している.さらに,このフラクタル的スペックル場において,観測面を3次元的領域に拡張して実験を行った結果,この散乱場は一軸性の非等方性フラクタル場であることが示された.
4. フレネル回折場および像面のフラクタル性
上記二重散乱スペックル光学系のフレネル回折場にもフラウンホーファー回折場と同様のフラクタル場が現れることを実験により示した.また,散乱面を物体とする二重回折結像光学系の像面にもフラクタル的スペックル場の形成が可能であることを実験により示した.
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