研究概要 |
本研究では回転検光子型分光エリプソメーターで,完全円偏光を基準偏光として生成して,0.02%精密度で装置を校正する方法を確立し,系統誤差の程度と性質を明らかにして,オーバーオールに測定の正確度を0.1%にすることを目的とした. エリプソメーターの測定誤差は、本研究の結果、装置固有の各種の系統誤差に加えて、試料の裏面処理と解析計算モデルの妥当性に付随する系統誤差に大別できた.まず,装置固有の系統誤差では,誤差原因を分離して検知し,処理する方法を考案した.理想的に校正された回転検光子装置では,完全円偏光に対しては出力が直流成分のみになる.残留周波数成分が回転数に一致する場合は,プリズム検光子の微小偏角によるビームの振れ,あるいは,検出器の感度ムラと回転機構に付随する機械的変動や光路中のビームの蹴られなどが結合した原因である.一方,回転同波数の2倍の成分の場合は,検出器の偏光特性などの偏光特性が関与した誤差と判断できる.また,装置に固有で調整できない誤差として,位相子の吸収二色性と位相角の±90゚からのずれを,位相子を装置に搭載したままで計測する方法を開発した.計測された値を考慮すると,消光法におけるゾーン測定の誤差を1/20に減少できた. さらに,試料の裏面反射の処理に付随する誤差と,試料薄膜の屈折率の厚さ方向の変化(不均一)の影響が明らかにできた.裏面反射については、波長の関数として周期的に起こる完全直線偏光反射の条件に着目し,残留する楕円率が誤差に比例することを利用して校正できた,また,不均一は,この条件で反射される完全直線偏光の方位角と,膜のない基板だけの試料での方位角との差で定量的に校正できる.
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