研究概要 |
昨年度の研究では,ブナやクマシデの葉に見られる,比較的規則正しくコルゲ-ト状に折り畳まれている葉について,2次脈の中央脈に対する角度(葉脈角α)と折畳み・展開様式の関係を調べた.その結果,α=75゚等の葉脈角が大きい場合は,α=30゚〜45゚の小さい場合に比べて,より小さく折り畳め,小さい蕾への収納は容易と考えられるが,展開初期の葉身面積が小さいので,光合成の観点から考えると,必ずしも有利とはいえないことがわかった。 本年度は,葉はコルゲ-ト状に折り畳まれているが,平面的に展開するシデノキの葉とV字状に展開するハンノキの葉の展開様式の違いに着目し,葉脈間隔の計測や,折畳み数値モデルを用いたベクトル解析により,その違いが,谷折線である葉脈と,その間にある山折線の位置関係にあることを突き止めた.即ち,シデノキの葉では,葉脈間隔比a^*(=a_2/a_1,a_1:谷折線ー山折線間隔,a_2:山折線ー谷折線間隔)がa^*【approximately equal】1.0であるが,ハンノキの葉はa^*【approximately equal】1.4となっている.a^*【approximately equal】l.Oの葉とa^*【approximately equal】1.4の葉について,葉の大きさや葉脈角が同じであれば,葉が完全展開するまでに要する運動エネルギ-の総計には大きな差がないこと,a^*【approximately equal】1.4の葉では折畳み時の葉脈の重なりを避けることができることが確認され,折畳み時の葉脈が比較的太いハンノキは,a^*≠1.0の葉脈間隔を採用した考えられる. 本年度のもう一つのテ-マは,掌状脈系に沿ってジャバラ状に折畳まれたモミジの葉に見られるような折畳み・展開構造の研究であり,日本では最も一般的なモミジの一つであるヤマモミジの葉について,葉脈角や葉脈の長さ,葉身要素の面積分布等を計測し,葉脈の長さの比や葉脈角の差をパラメ-タ-として,展開時の総運動エネルギに及ぼすこれらのパラメ-タ-影響について検討した.
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