研究概要 |
多孔質材の利用や特性評価のためには、空隙のトポロジーやメゾスケールの構造とマクロな特性との関係を正しく理解することが不可欠である。本研究では、球状粒子焼結体のマクロ特性、特に有効弾性定数と熱伝導率の3次元シミュレーションの方法を提案し、その方法により評価されたマクロ特性を、ランダム充填の統計的特性から検討することを目的とした。特に、多孔構造の統計的特性の新しいパラメータとして、多孔質充填体構造の切断面に現れる円の直径の累積分布とブランチの方向分布を用いることを提案し、その視点から検討した。 従来,粒子の逐次自由落下により生成される球状粒子ランダム充填体に関しその構造は重力の影響を受けず等方性を有すると考えられていた。しかしブランチ(接触している球状粒子の中心を結ぶ線分)の方向分布の解析から,その充填構造は重力の影響を受けて垂直異方性(面内等方性)を示すことが確認された。この充填構造の異方性のため,有効弾性定数や熱伝導率も垂直異方性を示すことが判明した。一方,ガラスビーズ焼結体中の超音波の位相速度の測定から,有効弾性定数が垂直異方性を示すことが判明した。このことは,粒子の逐次自由落下による球状粒子ランダム充填体の生成は実際の粒子の充填状況を良く模擬していること,本シミュレーション法が妥当であることを示している。
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