研究概要 |
低温構造体の重要性が高まるにつれて,低温構造材料の変形特性の把握が必要となってきている.本研究では,低温構造体として広く使われているSUS304鋼について,繰返し変形挙動に対する予ひずみの方向と大きさがどのような影響を実験的に調べた.また液体窒素温度および室温で予ひずみを与えた後に,繰返し変形挙動をそれぞれ室温と液体窒素温度で行い,予ひずみを与えた温度と繰返し変形の温度を変化させて,予ひずみの繰返し変形におよぼす影響も実験的に調べた.実験は,液体窒素中,または室温の大気中で薄肉円筒試験片に,ねじりまたは引張圧縮の負荷を加えて行った. 予ひずみの繰り返し変形への影響につては次の結果が得られた. (1) 予ひずみを繰返し方向と直角方向に与えた場合,繰返し変形の初期の段階で硬化が大きく進むが,繰返し負荷の回数が増加するにつれて硬化は緩やかになり,予ひずみを与えない場合の繰返し特性に近づく. (2) 予ひずみを繰返し変形と同方向に与えた場合には,予ひずみと繰返し塑性ひずみはほぼ等価で,両方の硬化特性はほぼ同じになる. 予ひずみを与える温度の繰り返し変形への影響につては次の結果が得られた. (1) 繰返し方向と垂直な予ひずみは,室温で与えるより77Kで与える方が繰返し負荷の硬化量が大きくなる.しかし,繰返し回数が多くなると,予ひずみを与えるときの温度の影響は小さくなる. (2) 繰返し方向と同方向の予ひずみは,77Kで与えても,室温で与えても,その後の繰返し変形に大きな影響を与えず,予ひずみを与えない場合の繰返し変形とほぼ同じである. これらの結果から低温繰り返し塑性変形の基礎的な構成関係が得られた.
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