研究概要 |
金属の相変化のなかで特に凝固・溶融現象を取り上げ,その過程を理論的・解析的に記述することを目的として,1.自由境界問題の数値解析の基礎,2.数値解析手法の開発と適用,3.金属材料の溶接における自由表面と熱影響部の性質,を主な検討課題として以下の結果を得た. 1. 自由境界問題の数値解析の基礎・・・凝固・溶融現象をステファン問題としてとらえ,各相の支配方程式と凝固界面(自由境界)での熱流の条件(ステファンの条件)を,物質座標系,空間座標系でそれぞれ定式化した.積分ペナルティ法によって自由境界におけるステファン条件が領域積分に置き換えられることが示され,有限要素法などの領域型解決との適合性がが飛躍的に向上することがわかった. 2. 数値解析手法の開発と適用・・・積分ペナルティ法を用いたステファン問題の数値解析手法を開発した.解の挙動に及ぼすペナルティ数,空間増分,時間増分の関係を,マトリックスのノルム評価によって明かにした.ついで2次元2相の問題を解析した. 3. 金属材料の溶接における自由表面と熱影響(HAZ)部の性質・・・SUS304ステンレス鋼円盤中央を溶融・凝固させ,そのプロセスの温度履歴を計測するとともに,溶接終了後の組織観察と硬さ分布から溶融部・熱影響部の把握を試みた結果,ACl変態を超えた熱影響部で明確な組織変化と硬さの変化を確認した.アルミニウム試料に対してTIG溶接機を用いて突き合わせ溶接を施し,溶接部を含む領域の組織,硬さ,変形を実験的に検討した.さらに,引張試験において微視領域のひずみをマイクログリッドを用いて測定した.
|