研究概要 |
延性,可撓性に優れるポリエチレン管は,はからずも阪神大震災においてその耐震性が実証され注目を集めている管材である.このポリエチレン管の継手として用いられる電気融着継手は,構造上管末端に若干の不融着部が生じ,これが破壊起点となっている.本研究では,継手不融着部をき裂と見なし,破壊力学的な観点からこの継手を検討することを目的として,3次元の円筒形状を有する不融着き裂の応力拡大係数の解析と破壊靭性値の実験的評価を行うとともに,クリープ変形におけるき裂先端の変形挙動を解析した結果, 1, 3次元特異要素を用いた有限要素法によって不融着き裂の応力拡大係数K_IとK_<II>を求めた結果,管径Dで無次元化した継手部厚さt/Dの増加につれて減少するが,t/Dが0.3を越えるとその割合は緩やかになった.融着長さl/Dの増加につれてK_<II>は減少するが,K_Iは一定となった.不融着き裂長さaの増加についれてK_Iは増加する傾向にあるが,K_<II>はa/D=0.15で最小値を示す下に凸状の挙動を示した.これより,K_<II>を最小にする最適な不融着長さが存在することがわかった. 2, 3点曲げ破壊靭性試験を行って-196℃から-120℃におけるポリエチレンの平面ひずみ破壊靭性値K_I_cを求めた結果,K_I_cは温度の増加につれてほぼ直線的に減少した.-196℃におけるK_I_cの値は約6.39MPam^<1/2>,-120℃においては3.47MPam^<1/2>であった.(1)の解析結果から継手の最大負荷内圧での混合モード応力拡大係数K=√<K^2_I+K^2_<II>>の値は0.45MPam^<1/2>となり,実験によるK_I_cと比較すると安全率は7程度となることがわかった. 3, 単軸クリープ試験を行いBailey-Norton型のクリープ構成式を評価した.このクリープ構成式をMises形の理論を用いて3次元応力状態に拡張し,これを用いてUp-dated Lagrange型の有限要素法によりクリープ過程における切欠き先端の変形挙動を解析した結果,切欠き先端の相当クリープひずみは時間とともに増加するという傾向にあり,またその大きさは切欠き半径が減少するにつれて増加することがわかった.
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