研究概要 |
酸応力環境下におけるGFRP織物積層板のき裂進展挙動および下限界特性について研究を行った. 試験片として応力腐食割れの挙動が顕著に現れる,強化材としてEガラス繊維,母材樹脂としてエポキシ樹脂を用いた試験片を用い,塩酸環境での負荷条件,環境条件がき裂進展挙動および下限界特性に与える影響について詳細な調査を行った. 負荷条件については静荷重,繰り返し荷重で試験を行い,応力比および周波数を変化させた結果,き裂進展は時間および最大応力拡大係数に依存していることが明らかとなった.また,繰り返しの効果によるき裂進展の促進は見られず,静荷重下での結果と比較してかえってき裂進展が遅くなり,下限界も上昇する現象が見られた.SEMを用いた破面観察により,繰り返し荷重下では界面のはく離,繊維の引き抜けが起こっていることが明らかとなった. 環境条件については塩酸濃度および塩酸温度の変化による挙動の変化を詳細に調査した.塩酸濃度に関してその影響はき裂の進展が収束する下限界近傍で顕著に現れ,303K静荷重環境で下限界値は塩酸濃度が上昇するにつれある値に収束する傾向が見られた.303K繰り返し荷重環境では,下限界値は塩酸濃度1mol/lで極小値を持つことが明らかとなった. 温度が上昇するとき裂進展は促進されるが,定常き裂進展領域において促進の度合いをアレニウスの式を用いて説明することが出来た.また,下限界特性は温度が上昇すると静荷重下ではそれほど大きな影響が出ないが,繰り返し荷重下ではその影響が顕著に現れ,値が大きく減少し極小値をとらなくなることが明らかとなった.
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