研究概要 |
本研究では,Ti-Ni系形状記憶合金を対象として高密度かつ複雑形状付与ができる粉末射出成形法による焼結体の作製条件,特にバインダの選択,脱バインダ条件および焼結条件を検討した.また,放電焼結法による焼結条件について検討した.これらの方法で得られた焼結体の機械的性質について調べるとともに形状記憶素子作製のための基礎となる形状記憶特性について調べた. 1.粉末射出成形法による形状記憶合金の作製とその熱・力学特性 TiとNiの素粉末での焼結では,これらの相互拡散係数の違いから相対密度67%程度の焼結体しか得られなかった.このため,引張強さは110MPa程度,伸び1.5%程度であったが,回復応力試験を行うことにより明らかな形状記憶特性を示すことがわかった. 2.放電焼結法による形状記憶合金の作製とその熱・力学特性 放電焼結法によりTiおよびNi素粉末あるいはCu粉末を用いてTi-Ni系形状記憶合金の作製を試み,その作製条件と得られた焼結体の組織および熱・力学的特性の関係について系統的に調べた.その結果,次のような知見を得た. (1) 焼結体の引張特性,すなわち変形抵抗および延性は溶体化熱処理により大幅に改善することができ,形状記憶処理した焼結体の引張強さは800MPa程度,伸びは7%程度で,これまで報告されている粉末治金法による結果に比べても非常に優れた引張特性を有する焼結体を得ることができた. (2) 形状記憶素子に利用するために重要な回復応力は2%予ひずみで280MPa程度の優れた値を示した.また,繰り返し試験後では300MPa程度の高い回復応力を示した. 以上のように,形状記憶素子として利用するための基礎的な形状記憶特性について明らかにできた.今後,合金粉末の利用による組織の改善を行い,一層の機械的性質および形状記憶特性の向上を図ることにより形状記憶素子への適用が可能であると考えられる.
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