研究概要 |
磁気ディスクやポリゴンミラーなどの電子光学部品に多用されているAl-Mg合金を単結晶ダイヤモンドバイトで超精密切削する場合の仕上面あらさの創成機構を実験的に検討した。その結果,超精密切削面のあらさが理論あらさに比べて大きくなる要因として超精密切削面に現れる結晶粒界段差が揚げられることを確認した。そこで,超精密切削面に現れた粒界段差を構成する個々の結晶粒の面方位をECP(エレクトロ・チャンネリング・パターン)法を用いて特定し,段差を形成する個々の結晶粒の面方位と仕上面における結晶表面のレベルとの関係をステレオ三角形に対応させて求め,切れ刃の逃げ角が2,5,10,15゚のダイヤモンドバイトを用いて,逃げ角が仕上面あらさと粒界段差に及ぼす影響を検討した。その結果,逃げ角が比較的小さい場合はステレオ三角形の頂点として表される(111)面,(011)面及び(001)面から三角形中央の(124)面に近づくに従って結晶表面は高くなる傾向が顕著に現れることが明らかになった。しかし,逃げ角が大きい場合は同様な傾向が明瞭に確認できないことがわかった。また,逃げ角が小さくなるに従って切れ刃逃げ面が工作物表面を擦過するバニシ作用が強まるため,粒界段差は小さくなることが確認された。また,そのために切れ刃と工作物表面との接触面における比切削抵抗比(比切削主分力と比切削背分力との比)は逃げ角が小さくなると共に大きくなり,X線回折により求めた仕上面の残留応力は,小さい逃げ角のバイトで仕上げた表面ほど圧縮の残留応力が大きくなることが明らかになった。
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