研究概要 |
本研究では,まず平滑軸および段付き軸の高周波焼入れによる残留応力と硬化層を軸対称FEMによる電磁界・熱伝導・弾塑性応力解析法を用いて求め,最適焼入れ条件と加熱コイル形状について検討を加えた.次に歯車の高周波焼入れ過程の電流密度,温度,応力を計算するための三次元FEM解析プログラムを作成し,本解析プログラムの有効性を確かめた後,種々の焼入れ条件に対する歯車の高周波焼入れによる残留応力と硬化層を求め,歯車に対する二重(低・高)周波焼入れの有効性と最適焼入れ条件について検討を加えた.その結果,次のようなことが明らかになった.1.平滑軸の高周波焼入れによる残留応力に対する最適な加熱条件(加熱電力P,周波数f)を選定するためのマップを提示した.2.平滑軸の高周波焼入れによる有効硬化層深さ(Hv=550)は,コイル長さ,P,fの減少とともに軸中央では増大するのに対し,軸端では逆に減少する.3.内径が一様なコイルを用いた段付き軸の単周波高周波焼入れによる軸,円周方向残留応力σ_z^*,σ_θ^*は,fが小さい場合には,・小径部表面のみで,fが大きい場合には大径部表面のみで大きな圧縮応力になる.4.段付き軸の高周波焼入れによる軸表面のσ_z^*,σ_θ^*は,二重周波焼入れを行うことによって,全軸表面で大きな圧縮応力になる.5.段付き軸の高周波焼入れによる硬化層は,ある肩高さまでは二重周波高周波焼入れを採用することによって軸表面に一様に生じさせることができるが,肩高さが大きくなりすぎると,コイルを小径部軸端から張り出させる必要がある.6.歯車の高周波加熱終了時の最高温度の位置は,歯幅が狭い場合にはP,fにかかわらず歯幅端歯底になるが,歯幅が広い場合には,低いfでは歯幅中央歯底に,高いfでは歯幅中央歯先になる.7.歯車の高周波焼入れに二重周波加熱を採用することによって,加熱終了時の等温線,残留応力および硬化層はほぼ歯形に沿ったものにすることができる.
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