研究概要 |
歯車変速機は、確実な動力伝達用として広く使用されている。中でも遊星歯車機構を用いた変速装置は、固定軸,入力軸,出力軸の構成方法の違いによって、容積をあまり変化させずに広範囲な減速比が得られるので、自動車をはじめ多くの分野で使用されている。特に、コンパクトで高減速が必要なロボットの関節駆動用でも遊星歯車機構を基本とした変速装置、例えば、ハーモニックドライブ、サイクロ減速機,不思議歯車遊星減速機などが使用されている。 本研究ではロボット駆動用に適した高効率・高減速・高精度な新形の遊星歯車変速機を研究開発し、その変速機の運転性能を明らかにした。また歯車や軸受の転がり接触面の摩擦特性など、それに関連する基礎的研究を行なった。研究計画調書の提出時とは、所属先が変更したが、ほぼ当初の計画に従い研究を進め、以下に示すような研究成果を得ることができた。 (1) 鏡面仕上ローラ(Ry=0.03μm),研削仕上ローラ(Ry=0.1〜3μm)を用いて2円筒試験を行なって、接触面の表面粗さ,潤滑油が転がり接触面の摩擦係数や損傷にどの様な影響を及ぼすかを実験的に調査して、新形歯車変速機で用いる歯車の加工方法や潤滑油選択のための指針を得た。 (2) 基礎実験用として内転差動歯車変速機(減速比31.3),外転差動歯車変速機(減速比=76,4.89)不思議歯車変速機(減速比=125)を試作し動力伝達効率に及ぼす油種,軸受の影響や歯形かみ合い率などの影響を明らかにした。 (3) 変速機の運転性能を調べるために、よく用いられる〔モータ駆動/ブレーキ制動による動力吸収式の効率試験〕の他に〔準静的なトルクバランス式の効率試験〕を提案しRunning-efficiencyとStatic-efficiencyの違いについて考察し、トルクバランス試験方法の有効性を示した。 (4) ピン・ホールカップリングを必要としない3本クランクシャフト式の新形の偏芯式遊星歯車変速機の構造と特徴を明らかにし、減速比が392.3で負荷容量が5kWの変速機を設計・製作した。 (5) 試作した新形偏芯遊星歯車変速機の特徴と運転性能を明らかにした。試作した変速機は減速比が約400と大きいにも関わらず、ハイポイド油を用いたときの最高効率は、減速時にη=75%、増速時にη=73%が得られ、優れた性能を持っていることが分かった。
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