研究概要 |
本研究は超微細結晶の純銅について四角錐圧子の押込みと引っかきの各試験ならびにピン-円板型の摩擦・摩耗実験を行い,それらの試験結果を粗大結晶粒の銅についての試験結果と比較し,変形の特性について調べることを目的として行ったものである. 試料として押込みおよび引っかき試験には(1)SPD(Severe Plastic Deformation)法の一つであるECAP(Equal Channel Angular Pressing)によって作製した平均結晶粒径200nmの超微細結晶純銅(Ultra-Fine Grained Copper,UFG0.2),(2)UFG0.2に焼なましを施して内部応力を除去したもの(UFG-A),(3)結晶粒径約15μmの純銅(FG)および(4)純銅の単結晶を用いた.一方摩擦・摩耗試験には試料(1)と(5)結晶粒径約700μmの純銅(CG)を用いた. 実験の結果から以下に記す結論を得た. 1. 押込み仕事量に対する弾性回復エネルギの割合は結晶粒径が細かい方が大きく上記材料の中では単結晶試料が最も大きい. 2. UFG0.2とUFG-Aでは押込み負荷時間が長いほど硬さの値は大きく現れるが,他の試料では負荷時間の影響をほとんど受けない. 3. 引っかき硬さと押込み硬さとの比は試料(1)と(2)では約0.7,試料(3)では1.7〜2.0,また単結晶でほぼ1.0という値である. 4. UFG0.2,CGともにすべり速度の増大とともに比摩耗量が減少する傾向を示すが,ある特定のすべり速度のもとで比摩耗量が極端に大きい値を取る. 5. UFG0.2,CGでは摩耗過程でシビア摩耗とマイルド摩耗が確認でき,シビア摩耗では摩耗粉の移着,成長,一方マイルド摩耗では酸化物粒子の生成,堆積が起る.
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