本研究では、音響圧縮機に用いられる断面縮小音響管内の有限振幅波動を、数値解析および実験により解析することを目的とした。音響管内の気柱は、正弦波状に振動するピストンによって駆動され、有限振幅定在波状態を形成する。このときの管内波動現象数値解析には、時間2次、空間4次精度の陽的マコーマック法を適用し、非定常壁摩擦項を考慮すると共に、圧縮機実動作を考慮した吐出・吸入バルブ作動条件に基づく境界条件を設定し、実動作に近い条件の下で解析を行った。実験では、2次元の等断面積ダクト、線形断面縮小ダクト、指数関数状断面縮小ダクトを用いて基本的特性を調べた後、実際の音響圧縮機用音響管を想定した軸対象指数関数状断面縮小管(断面縮小比100)を用いて、波動現象を解析した。 これらの数値及び実験解析により以下のような成果が得られた。数値解析では、断面縮小比が増すと共に管閉端部圧縮比が増加するが、断面縮小比16以下では、衝撃波発生による圧縮比増加に限界が現れること、それ以上ではショックレスの共振状態が得られ、閉端部圧縮比も増加するが、断面縮小比50以上では断面縮小比増加の効果は顕著でなくなること、が明らかになった。また、吐出・吸入バルブ動作を考慮した解析結果より、冷媒循環量の見積もりが可能であることが明らかになった。 2次元断面縮小ダクトによる実験結果より、指数関数状断面縮小ダクトで最も高い圧縮比が得られることが実証され、上述の軸対称3次元指数関数状断面縮小音響管を用いて管内気柱を共振点近傍で励振し、波動状態を実測した。なお、比較のために、直管についても実験を行った。得られた実測結果では、断面積一定管内の圧力変動の実測値と数値解析結果は、極めて良い一致を示したが、断面縮小管については、実測値と数値解析結果との一致が得られず、断面縮小比が大きいときの本解析法の問題点が明らかになった。
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