研究概要 |
本研究は,軸流中の円筒に設けられたキャビティ内流れの渦構造の特性を実験的に解明しようとするものであり,アスペクト比(幅に対する深さの比)が1〜4のキャビティを有する軸対称物体を製作し,PIV(粒子画像流速計)およびUVP(超音波速度分布計)を用いた水槽実験を行った。主な研究の経過および成果は以下の通りである。 1. まず一様な軸対称流を得るために,円筒頭部はポテンシャル流から計算される流線形とし,円筒支持方式については,円筒下流端での固定支持と円筒部上流端近傍でのワイヤ支持を採用した。 2. PIV計測では相互相関法を原理とする画像解析ソフトウェアを作成し,大きな速度範囲を有するキャビティ内流れの高精度計測のため検討・改良を行った。さらに,PIVとUVP計測を同時に行うための計測ソフトウェアの開発に着手し,その際に利用するトレーサ粒子の検討を行った。その結果,PIVでは蛍光染料を,UVPでは水の電気分解によって発生させられる水素気泡をそれぞれ用いることとしたが,計測ソフトウェアについては現在発展段階にある。 3. 以上の準備を経て,円筒静止時のアスペクト比1と4のキャビティについて実験を行った。まず流れの可視化より,本流れ場においても二次元キャビティと同様に,キャビティ深さと同スケールの主渦と複数の二次渦からなる渦構造をとることが分かり,キャビティ上流端から剥離するせん断層は,準周期的にその付着位置を変化させ,主流とキャビティ内との間を振動する。 4. PIVの実験からキャビティ内流れの平均速度ベクトルマップと渦度等値線を調べたところ,主渦と二次渦の大きさと配置についての結果を得た。またUVP計測からは剥離せん断層の時空間的挙動を調べ,振動現象の平均周波数とその時空間的なゆらぎ,そしてせん断層内変動速度の時空間相関を明らかにした。 5. 今後さらに実験およびデータ解析を進め,非定常特性として,せん断層のロールアップとキャビティ後縁でのクリッピング,変動渦度の大きさと最大渦度を示す位置の確率分布などを明らかにし,これら諸特性と三次元構造との関連性を解明する予定である。
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