研究概要 |
本研究では,ピストンの位相を考慮して二段噴射を行うことにより濃淡二層予混合気を形成する直接噴射式層状給気機関を考案し,その燃焼特性についての検討を行った.最初に,ピストンの中心部に設けた濃予混合気用キャビティとその外側に設けた希薄予混合気用キャビティに対する噴射時期をピストンの位相を考慮して設定し,燃料分配を適切に行うことで任意二層混合気の形成を試みた.実験に先立ち,多次元エンジンCFDコード「FIRE」を用いて本燃焼系の解析を行ったところ,燃焼室内に濃淡予混合気は形成されているものの,内外各キャビティ内はかなり不均一であり,とくに内キャビティ内は壁面近傍がかなり濃くなっているのに対し,全体的には設定よりも希薄であり,とくにキャビティ上部の中心付近はかなり希薄になっていることがわかった.実験では,上記解析結果を踏まえて,各種因子の最適化を試みた結果,ピストン下降中に噴射して燃焼室全体を極力均一化し,圧縮行程に内キャビティに噴射して濃淡二層化を図るのが現段階では最良であることが明らかとなった.しかし,実機においても内キャビティに実際に形成される混合気は設定よりもかなり希薄になっているなど,まだ二層化が不十分でNOx低減などに満足し得る結果は得られず,噴射システムや燃焼室形状といった設計因子に対する最適化などが今後の研究課題として残された.次に,第二の試みとして上下二分割形燃焼室を用いて,一段目燃料噴射を吸気管に行い燃焼室内に均一希薄混合気を形成し,二段目をピストンの位相を考慮して筒内に噴射することにより過濃混合気を燃焼室下部に形成することで,混合気の濃淡二層化を試みた.その結果,吸気管への燃料噴射割合Φmが少なくなる,すなわち濃淡二層化が強化されるにしたがってNOxは減少するのに対し,熱消費率はΦmが30%までは均一燃焼のレベルを維持でき,濃淡二層燃焼の効果を確認できた.
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