研究概要 |
熱エネルギー有効利用を図る方策の根本原理の一つは,熱機関の作動流体温度を可能な限り高く保った状態で利用することにある.この応用例の一つに高温ガスタービンの開発が挙げられるが,そのタービン翼内側から衝突噴流によって冷却する技術向上に応用できるよう,縦渦を活用する伝熱促進法に注目した実験的研究を行った.研究の初期段階には,クロスフローのレイノルズ数および噴流速度とクロスフロー速度の比などの実験パラメータの組み合わせを数種類変更して,流れ場・温度場の計測を行った.その結果に基づき,本実験の条件を設定し,斜め衝突噴流吹き込みにより発生する縦渦を伴った複雑な流れ場の計測を実施した.その際,二方向速度成分同時高空間分解能測定を行なうため,専用トラバース台に搭載した二次元レーザードップラー流速計を充当した. 本研究で扱う衝突噴流の噴出方向は伝熱面に対して,従来からのような垂直ではなく,強い縦渦が発生するように垂直よりも浅いピッチ角で,かつ,クロスフローに対してもスキュー角をつけた.実測結果においても,その速度分布図から噴流自らが誘起する一対の互いに反対方向に回転する大規模な縦渦の存在を明らかにした.さらに,得られた速度成分の時系列信号に各種統計解析ならびにスペクトル解析を施し,速度の変動成分や乱れエネルギーについても導出し,縦渦の存在位置との対応も調べた. 一方,伝熱板温度の測定についてもニューラルネットワークによる感温液晶の色-温度変換によって伝熱板表面の熱伝達率分布を求めた.その結果から,熱伝達率の高い領域は縦渦の存在領域や速度ベクトルの分布図などと極めてよい対応を示すことが明らかになった.とくに,噴流の噴出方向に発生する縦渦はもう一方の縦渦に比べて,主流に対するスパン方向への伝熱促進領域拡大に貢献しており,これには伝熱壁近傍の時間平均的な流速分布が強く影響していることが分かった.
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