研究概要 |
液体を円形のノズル噴孔から高速で噴出させた時の,噴孔内のキャビテーション気泡の挙動が噴射後の液体の分裂と噴霧特性に及ぼす影響を調べた.また液体を加熱して噴孔内のキャビテーション気泡の生成を促進させ,これが噴射後の液体噴流の分裂過程に及ぼす影響も調べた.実験装置は噴射液体加圧用,加熱用のアキュムレー夕,噴射管,インジェクタからなり,インジェクタ先端に取り付けた直径0.5mmの噴孔を有するノズルから水を定常的に大気圧の空気中に噴射した.噴孔内のキャビテーション気泡の生成,発達,消滅の過程で発生する超音波を,ノズル表面に接着した超音波トランスデューサによって検出することを試みた.またノズル外部から噴孔内壁の数カ所に極細の電極を挿入し,電極間の噴孔内液流のインピーダンスを測定した.噴射直後の液体噴流の分裂過程を拡大写真法で,噴霧の構造をレーザーシ一ト写真法で撮影した.さらに液体噴流の分裂長さを電気抵抗法で測定した.以上の実験の結果,以下の知見が得られた.(1)超音波トランスデューサにより噴孔内キャビテーションの生成,発達,ハイドロフリップの状態変化を検出できる.(2)噴孔内液流のインピーダンス測定により液流の噴孔内壁との付着状態を検出できる.(3)噴射直後の液体噴流表面の波動は,ハイドロフリップが発生する直前の低い噴射圧力では三次元的な複雑な状態である.(4)ハイドロフリップが発生すると噴孔軸に平行な波が複数観察され,噴孔内部に見られる流動方向に伸びる再付着線と関連がある.(5)噴射液体を加熱して液体の蒸気圧が雰囲気圧力以上(噴射圧力は液体の蒸気圧以上)とした温度の液体を噴射すると,噴霧の広がりは噴射直後から非常に大きく,分裂長さは小さい.(6)このような加熱液体の噴射時に見られる良好な微粒化特性はノズルの噴孔長さが長い方が顕著に見られる.
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