研究概要 |
吸収冷凍機吸収器の高性能化を目的に,現行の伝熱管型ではないプレート型吸収熱交換器を試作し,プレート外壁面上を流下するLiBr水溶液の流動状況の可視化観察と,その際に流下する薄液膜の表面ならびに内部に生じる界面活性剤添加によるマランゴニ対流の発生・成長機構について検討するために,レーザーホログラフィ実時間干渉法による静止LiBr水溶液膜を対象とした界面撹乱の可視化観察を行った. まず,カラーハイスピードビデオカメラを用いたプレート型吸収器の伝熱面上を流下するLiBr水溶液の流動状況の可視化観察から,水蒸気を吸収しつつ流下するLiBr水溶液は,一様な液膜厚さで流下するのではなく,界面活性剤添加による吸収の空間的な不均一性のために,断続的な筋状流れを形成していることがわかった.そして,この筋状流れの時空間的な変化は吸収伝熱性能に大きな影響を与えることを示した. ついで,静止LiBr水溶液膜を対象とした可視化観察から,吸収開始直後(数ミリ秒のオーダー)に液表面にベナールセル状の規則性を持った微小セルが発生することを初めて示した.そして,この微小セルはごく短時間のうちに消滅し,液膜内部の流動を伴った大きな渦を引き起こすことを示した.また,その際,極細熱電対を用いた溶液表面温度の測定を行い,界面活性剤添加の場合には,吸収開始直後に表面において空間的な温度分布が生じること,そして,その分布は時間的に変化することを明らかにした. 以上の結果,プレート型吸収熱交換器の性能は現行の水平伝熱管型吸収熱交換器の性能を10〜20%上回る良好な結果を得た.特に横溝波形形状のプレートのほうが性能向上を期待できることも分かった.そして,静止液膜ならびに流下液膜を対象とした可視化観察により,その性能向上には,冷媒水蒸気吸収時にLiBr水溶液に生じるマランゴニ対流が大きく貢献していることを実験的に明らかした.
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