研究概要 |
回転角の高精度制御が必要となるNC工作機械や一部のロボットにおいては,トルクマッチングのために用いる減速歯車の伝達誤差やバックラッシ,伝達剛性等により制御精度や系の安定性が決定されるのが普通である.そのため,例えば,サーボモータを負荷に直結して減速機を取り去るダイレクトドライブが行われている.しかし,ダイレクトドライブは,精度的には極めて優れているが,大トルクのサーボモータを必要とすることや出力軸からみた軸慣性モーメントの低下を補うための補償器が大がかりになるなどにより,製造コストが高くなりがちであった. 本研究は,トラクションドライブの伝達誤差の周波数分析の結果が入力軸の1回転を基本とする基本周波数付近の低い領域に主に周波数成分を有することから,トラクションドライブを減速機構に用いると,モータの応答速度を極端に高めなくても十分な誤差補償が可能となることに着目したものであり,大トルクで高速高精度の角度制御を必要とするサーボ機構への応用が期待されるものである. トラクションドライブを減速機に用いたサーボ機構を実現するには,トラクションドライブの動特性を明らかにし,トラクションドライブ特有のスリップを考慮した制御法を開発するとともに,外乱トルクに対してサーボ剛性を向上させる研究を行う必要があるが,平成10年度においては,平成9年度に試作した実験装置を用いて,制御精度を向上させる研究を行った.はじめに,トラクションドライブを減速機に用いたサーボ機構の動特性を計算機シミュレーションにより求め,次に,トラクションドライブの動的トルク伝達特性を実測し,シミュレーションとの対比を行った.伝達特性の測定は,ローラの偏芯等の影響を受け,予想以上の困難が伴ったが,入力信号と出力信号の相関をとる相関法を用いた測定法を試み,動特性を精度よく求めることに成功した.シミュレーションの結果は,実測値によく合い,伝達特性のシミュレーションが正しく行われていることが確認された.また,この動特性の実測データを参考にした制御モデルを作成し,最終的にピークピーク値で10秒(角度秒)以内の誤差でトラッキングを行う高い精度のトラクションドライブサーボ機構を実現することができた.これは,優れた成果である.
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